SSブログ

知的障害のある方へのAT/AACその1 [e-AT・AAC(試験対策)]

障害別の各論に入っての3セクションめ.知的障害のある方へのAT/AACの紹介である.今回は発達障害,認知障害など本セクションで該当する障害の紹介を行なう.

  • 知的障害
    日本国内の知的障害児・者数は約455,500人(内訳18歳以上が338,900人,18歳未満が102,200人,不詳14,400人).法的には「療育手帳」を持つ人が知的障害と呼ばれるが,18歳以降に事故・病気等により認知障害・記憶障害を発しても,法的には知的障害とはならない.
    • 知能
      自分の回りの環境の利用に関する複雑さや,社会生活の複雑さを認識し,将来を見通して適切に対処するための能力の一側面であり,言語・計算・注意・空間認知・運動など様々な高次脳機能によって成り立っている.
      知能は知能検査で測定され,知能指数(IQ)で表される.IQの平均値は100であり,75以下のとき知的障害とする場合が多い.
    • 発達障害
      • 知的障害
        健常児または健常児の知能を基準とする言語性・動作性(非言語性)の知能検査により分類され(要はさっき書いたIQが75以下ということ),知的機能に広汎に障害のあるものをさす.なお知的障害の原因には遺伝・染色体異常・病気・事故などかある.
      • 自閉症
        3歳以前に発症する先天的な疾患であり,対人関係・コミュニケーションの障害,非常に強いこだわりなどの問題行動を表す.自閉症の7~8割には知的障害を伴うが,知的障害を伴わない「アスペルガー型」や一部に高い認知能力を示す「高機能自閉症」などさまざまな症状がある.見通しを立てることができるような生活環境を整えるTEACCH法などが問題行動の抑止に効果的といわれている.
      • 学習障害(LD)
        LDはLearning Disabilitiesの略であり,全般的に知能発達に遅れはないが,「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」能力のうち特定の能力に著しい困難を示す.
      • 注意欠陥・多動性障害(AD/HD)
        AD/HDはAttention Deficit/Hyperactivity Disorderの略であり,「じっとしていられない」「すぐに気が散る」「衝動を抑えられない」などの問題行動が生じる障害のこと.特に多動の場合は学習に遅れが伴うことが多い.
    • 高次脳機能障害
      高次脳機能とは「知覚」「記憶」「学習」「思考」「判断」などの認知過程と行為の感情を含めた心理機能のことであり,病気や事故により脳に損傷があった際に認知障害が生じた場合,高次脳機能障害と呼ばれる.
      • 記憶障害
        記憶には,注意する→覚える(記銘)→保持する→思い出す(想起)の4つのプロセスがある.注意には,はっきりと目覚める(覚醒),集中する,一定時間注意を持続させる,注意が逸れないようにする(転導性),一度に複数の対象に注意を分配しながら作業を進める機能がある.痴呆は一度身につけた「知能」が脳の構造的な損傷によって失われた状態であり,記憶障害は必ず発生する.アルツハイマー病が代表例.
      • 認知障害
        見えていて聞こえていてもそれが何か分からない障害のことで,形・色・顔・空間・音楽など脳の損傷部位によってさまざまな認知障害が発生する.
        (演劇好き筆者のおまけ:ちなみに今年公演のあった後藤ひろひと作・演出の「Shuffle-シャッフル-」で,伊原剛志演じる主人公の刑事「シャッフル」が事故で「相貌失認」になり,顔の記憶と人物の記憶が一致しなくなり別の人物に見えてしまう(つまりは「シャッフル」されてしまう)というのを作品のベースにしていたが,あれも実際にある認知障害のひとつの例)
      • 読み障害
        視覚的に文字の形を認知することに障害があり読めない障害と文字の意味は分かるが声に出すことができない障害がある.
      • 遂行機能の障害
        行動がなかなか開始できず,ひとつの行動が長続きできない場合と行動が中止することができず衝動的で欲求を抑えることができない場合がある.

次回は実際に認知や記憶を補助するための支援機器の紹介を行なう予定である.


参考文献・サイト
  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会

nice!(0)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

nice! 0

コメント 5

のび

こちらが本家だったんですね(^^;

そういえば、自分も会社で脳障害のある男の子を預かって1年ちょっととなります。いろいろ難しいっすよねえ、、、世の中って。
by のび (2005-08-18 23:29) 

yas-shi

そう実はこっちが本家なの.書いてる内容結構本気度高いでしょ.
ときに,のびくん会社で預かった子って社員としてよね?
福祉系に力を入れている某社ならではってことなのかな.
私が会社を休む直前,某社の福祉担当替わりまくりですごかったんだけどな.
私は今この様ですので,とある福祉の試験をうけようかと企んでおり,
そのためこんな教科書みたいなblogになっちゃってます(笑.
明後日は大阪で芝居見るし,その次はF1なんでネタには困りませんわ.
とりあえず,コメントありがとう!
by yas-shi (2005-08-18 23:49) 

yas-shi

書き忘れ,そうそう私のプロフィール写真
よく考えりゃのびくんに撮ってもらった奴じゃないの.
勝手に使っちゃってるけど.
この件もありがとう,ということで.
by yas-shi (2005-08-19 00:34) 

のび

いやいや、準社員(パート)さんです。

社会保険はつくけど、時給で1年契約ってやつですね。単純に労働基準監督署かどこかに、規定枠の障害者雇用を満たしていないと指摘を受けて、それへの対応として全国のハローワークへ障害者枠での求人を出したという経緯があり、それに応募してきた人なのですね。

とはいえ、地方の正社員も数えるほどしかいない部署にそういった受け入れ態勢が整っているわけもなく、指導要員どころか任せる仕事すらもない状況で試行錯誤しつつはや2年…最近ようやく落ち着いてきたところであります。

まあ、その子は二十歳なんですが、今まで回りに恵まれてたのか「助けてもらって当然」っていう気持ちが強いタイプなので、いろいろとトラブルはありましたけどね。周囲もそういうことに対してあまり知識も意識もないし。

いろいろ勉強させてもらってますよ。
by のび (2005-08-20 00:15) 

yas-shi

ふーん,某社なら障害者向けの機器のベストセラーがあるんだから考慮してくれても良さそうなのにね.縦割り行政だからしゃーないんだろうね.

大体障害のある人って今回のケースのような例と,逆に親が「うちの子が一人で生きていけるように」って厳しくしつけられてるか両極端な場合が多いよね.

一度自分のサイトでも書いたんですが,こんな風にブログで障害のある方向けの機器を紹介している訳だけど(誤解を招いたらゴメンね),障害のある人でも私にとって嫌いな人はいるし,仲の良い人もいる.「人として生きていく」っていうのはそんな「人との関わり」とか「社会での自分のあり方」とか,そのようなものを考えるべきだと思うんだよね.

政治的な話になってちょっとアレなんだけど,「障害者自立支援法」今国会では廃案になったケド,間違いなくいずれ形を変えて成立すると思いますわ.働く必要のある障害者が増えるのよ.多分,のびくんが今経験していることに悩む人が今後増えるだろうね.長文で失礼.

追記:
というかホントは「障害者自立支援法」ってまず「自立」の定義って何ってところから話さないと決めることの出来ない法案だと思うんだけどね,個人的には.
 →ちなみに「自立」について考えるセクションもあるよん.
by yas-shi (2005-08-20 02:10) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。