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翼をもがれた蒼いヤツ(2006F1第12戦ドイツGP) [F1]

7月30日,ドイツの黒い森に浮かぶサーキット,ホッケンハイムリンクで開催されたF1世界選手権第12戦ドイツGPを回顧.北米ラウンドから続くフェラーリの好調だが,バカンス前の2連戦,どのようになるのか?また,今回は物議をかもしている「マスダンパー問題」にもちょろっと触れておきたいと思う.

  • ようやくライコネン,今期初のポール獲得!
    まず第1セッション,1コーナー立ち上がりでスピード(トロロッソ・コスワース)のクラッシュで赤旗中断.これでノックアウト確定,つか彼にとってはノックアウトされるのがデフォルトか…(失礼).ま,インタビューでアメリカンジョークを飛ばしてたくらいだから大事じゃなくて何より.ここドイツで新車SA06を投入したスーパーアグリとここで実戦デビューの山本左近(スーパーアグリ・ホンダ).ところが山本はフリー走行で最終コーナー立ち上がりでクラッシュしF1の手荒い洗礼を受けてしまう.当然予選は旧型のSA05,走行した車の中で最も遅いのは仕方ないか.一方のチームメイト,佐藤(スーパーアグリ・ホンダ)は新車SA06での予選アタック.これまで前を行くミッドランドに数秒差をつけられる絶望的な状態だったが,ここで自力でモンテイロ(ミッドランド・トヨタ)の前に出た.これからはテールエンド争いではあるが,ミッドランド対スーパーアグリのバトルが見れそうでそれはそれで少し楽しみ.
    そしてここが地元となる各ドライバー・チームの予選状況を….ザウバーBMWは元気なく第2セッションでノックアウト.結局昨年タッグを組んでいたウィリアムズ・コスワースの2台にお付き合いする形となった(そうだ,ロズベルグ(ウィリアムズ・コスワース)もドイツ国籍だった.フライングフィンのオヤジのイメージが強いからなぁ.どうでもいいですけどニコ,かわいいようで彼の写真に落書きでヒゲを書いてみてください.ケケになります).ファクトリーがドイツにあるトヨタ.ちなみに来年はウィリアムズにエンジンを供給.友人とネタで話していた「ウィリアムズ・レクサス」が本当に実現してしまうのか.こちらは地元R.シューマッハ(トヨタ)が7番手,トゥルーリ(トヨタ)が第2セッションでノックアウト.エンジン交換で20番手スタート.ここのところ絶好調のM.シューマッハ(フェラーリ),ここ地元ドイツでも絶好調.2番手フロントローを獲得.しかしポールをとったのはやっぱり地元のメルセデスエンジン搭載のマクラーレンのライコネン(マクラーレン・メルセデス).軽いタンクでのアタックを見事にまとめ今期初のポールポジションを獲得.ポイントリーダーのアロンソ(ルノー)は予選5番手のチームメイト,フィジケラ(ルノー)にも遅れをとる予選7番手.マスダンパー禁止が効いたのかルノーに絶好調時の速さは無かった.
  • スタート,後方で混乱発生
    シグナルのブラックアウトで各車スタート.上位陣は4番手スタートのバトン(ホンダ)をルノーの2台がパス.しかしアロンソはコース一番の抜きどころヘアピンでアウトに膨らみバトンに差し返されてしまう.そのヘアピンでは後方でR.シューマッハとクルサード(レッドブル・フェラーリ)の接触が発生.ロズベルグは単独クラッシュ.後方大混乱.しかしセーフティカーの介入は無く,黄旗振動で処理が行なわれレース続行.
  • SA06の処女航海は…
    山本は修理したSA06で出走すべくピットスタートを選択するも駆動系のトラブルでスタートに間に合わない.ようやくスタートしたかと思うとレーススピードには程遠いスピードで1周でピットイン,リタイアとなる.佐藤は1周めの混乱もうまくすり抜けモンテイロを押さえまくる.38周めまで粘り続けるもギアトラブルでストップ.2台リタイアとなった.連戦後はテスト禁止期間があるため,レースでデータをかき集めたいところだが,初戦だし仕方が無いのか.
  • ライコネンの作戦
    ホッケンハイムでは2回ストップ作戦に対して3回ストップ作戦のマージンが少ない(というかピット回数が増えると当然リスクは高くなる).そんな中,予選で明らかに軽いタンクでアタックしたライコネンの作戦は当然3回ストップ.1回めのピットはなんと10周め,早っ!しかし若干作業が遅れてしまいコースに戻るとバリチェロの後ろ8番手.作戦とは言えかなり苦しい感じがする….
  • ルノーは終わってしまうのか!
    スタートでこそルノーに先行を許したバトンだが結局フィジケラも交わし終始ルノーの前方を走行.これまでだと「バトン・レーシングスクール」状態になるところだが,ルノーはホンダにもついて行けない状況.結局最後まで速さは無くチームオーダー発動でアロンソが5位,フィジケラが6位でフィニッシュ.そんなにえらいのか,マスダンパー.
  • ライコネンvs.バトン
    2回ストップのバトンに対して荊の3回ストップのライコネン,必死に追い上げピットに入りまた追い上げる.3位で向かえた最後の3回めのピットはなんと55周め,遅っ!当然給油時間も少ないのでロスは少ないのだがバトンとの差がビミョー.コースに戻ると何とか5位のウェバーの前に入る.またまた追い上げを図るライコネンは2周後にバトンをあっさり攻略.見事3位入賞,ポディウムをゲット.
  • フェラーリ1-2フィニッシュ!
    ライブタイミングではこのままのペースだと全車周回遅れになるのでは,とまで書かれてしまったフェラーリの2台だが流石にそれは無く終盤はマシンを労わるクルージング走行.見事M.シューマッハが3連勝.マッサも2位に入りフェラーリはアメリカGPに続いての1-2フィニッシュとなった.3位が3回ストップ作戦成功のライコネン,バトン,アロンソ,フィジケラ,トゥルーリ,クリエンまでが入賞.完走は12台と厳しいグランプリとなった.

ここドイツでアロンソとM.シューマッハのポイント差は11となり,M.シューマッハに自力チャンピオンの可能性が復活した.ルノーとフェラーリの差は10.1つのグランプリでひっくり返せるところまで来た.しかしなぁ,あんなに速くかつ安定していたルノーがなぁ,こんなことになるとは.ということで「マスダンパー問題」について書いておこう.

正直「マスダンパー」がどのようなパーツなのかよく分からずググってみた.F1の記事の中,ビルの免震に関するサイトが多く引っかかる.簡単に私の脳内でまとめてみると「走行時(特にバンプ通過時やコーナリング時)のマシンの振動を軽減し,搭載したバラスト(重り)の位置を安定させることによって走行を安定させるための装置」ということで良かろうか,識者の方々.まぁ,このような装置が搭載されていても何の不思議なことでは無い.新しい技術を投入していくのもF1の魅力のひとつなんだから.ところがFIAはドイツGP直前にこの「マスダンパー」をレギュレーション違反(可動する空力付加物)として禁止した.ちなみに話をややこしくしているのがドイツGPのスチュワードで,彼は当初マスダンパーを「合法」と見なしたのだ.

さらにルノーは今シーズン開始前,マスダンパーがレギュレーションに照らし合わせて合致したものであるかをFIAにお伺いを立て,そのときには「合法」との回答を得ているのだ,主催者たるFIAから.ここまでくるとさすがに今回の急なレギュレーションの解釈変更には疑問を持ってしまう.ザウバーBMWの「バンザイ付加物(通称ペトロナスタワー)」も禁止されたが,こちらはかつてXウイングが危険(実際アレジがXウイングをピットでホースに引っかけて怪我人が出かけたこともある)でなおかつカッコ悪い(これ何気に重要!)という理由で納得もできるのであるがなぁ.特に危険が伴うものでもない新技術なのに,昨日シロだったものが今日はクロってのはどうかなぁ,と思うぞ.

1994年,セナが亡くなり,M.シューマッハが初めてチャンピオンを獲得した年のことである.当時ベネトン・フォード(今のルノーの前身)に在籍していたM.シューマッハは彼自身のミスはあったにせよ2戦出場停止という重いペナルティを受けた.このときはセナが亡くなった直後のグランプリで安全性に関するレギュレーションが一気に変わり,そのことに抗議をしたベネトンの監督であるフラビオ・ブリアトーレへの当てつけとM.シューマッハ独走状態のグランプリを盛り上げるというのがミエミエな嫌~な出来事だったのを覚えている.実際,鬼のいぬ間に悪魔…もといデーモン・ヒルが連勝を飾り,最終的にはM.シューマッハとヒルのポイント差はたった1ポイントとなったのだ.なんか今回もそのときと同じようなキナ臭さが漂っていて,非常に嫌な感じがする.

ルノーの今年の速さを支えていた要素のひとつにマスダンパーがあったのは多分事実であり,実際禁止されたとたんに今回のような結果となってしまった.ルノーほどのワークスチームであればテストをこなせばある程度速さは取り戻せるとは思うのだが,間もなくテスト禁止期間がやって来る.こんな形でポイント差が詰まることになろうとは….

ぐだぐだと書いてきたがF1の夏休み前の最後のグランプリは連戦となるハンガリーGP.フェラーリへの追い風は続くのか,ルノーは一体どうなるのか.決勝は8月6日.また回顧するのでよろしく!では.

追記:
勘違いされたら困るから書いておきますがデーモン・ヒルは私の好きなドライバーの一人です.悪魔なんて書いたけど.


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コメント 4

laki

こんばんは。TBありがとうございました。
記事タイトルが良いですねぇ^^
次はひっくり返って装着が許可されるなんて話もでてますが
FIAには一貫性のある裁定を期待したいですね・・・。
by laki (2006-08-01 22:40) 

yas-shi

lakiさま,コメントありがとうございます.
FIAの前会長のバレストル氏もたいがいなお方でしたが,
モズレー&エクレストンの手法もかなり強引ですよね.
そのような政治的駈引きもF1ならではということなのですが….
マスダンパーを再搭載でチャンピオンシップが
変な方向に行かないことを祈りたいです,ホント.
by yas-shi (2006-08-01 23:54) 

as

マスダンバー問題、これからどうなることやらです・・・純粋に速さを以外の部分で不穏な動きがあると、ファンとしてはどうしても嫌な気分になってしまうものです。とは言え、この変更でフェラーリはルノーを捕らえることに成功したわけなんですよね。うーん考えれば考えるほど、F1界って、本当に魑魅魍魎の巣食う世界ですよね・・・。
by as (2006-08-02 13:40) 

yas-shi

asさま,コメントとnice!ありがとうございます.

私の好きなモータースポーツや競馬は元々貴族の
遊びからはじまったものですからねぇ.
だから特にヨーロッパだとそのことが顕著になるのですが,
良くも悪くも政治的な部分が見え隠れしてしまいますよね.

これが良く表れているのが今シーズンの場合だと,
序盤のフレキシブルウイングの問題
(ドイツでミッドランドが失格になったのは今更なんだと思いましたが)と
今回のマスダンパーの問題,それと今ホットなのが
エンジン開発凍結の問題でしょうか.
このままだと限りなくワンメイクに近いレースになりそうで,
げんなりとしてしまいます.
#速い遅いは別にしていろいろな技術が見ることが出来るのも
#F1をはじめとするモータースポーツの楽しみの一つですからね.

せめてドライバーが熱いレースを魅せてくれることを期待しましょう.
by yas-shi (2006-08-02 22:14) 

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