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言語障害のある方へのAT/AACその2 [e-AT・AAC(試験対策)]

AACの紹介に関しては余り間を置かない方がより分かりやすいと考えたため,連日で記事を書いている.この記事は「ローテクコミュニケーション技法」「ハイテクコミュニケーション技法」とかなり幅広い分野のことを記載しているので,不明な点や具体的に示して欲しい点があれば,コメントなどでフィードバックして欲しい.それでは.

  • AAC(Augumentative and Alternative Communications)
  • ローテクコミュニケーション技法
    簡単な道具をを使用したコミュニケーション技法のこと.主には以下のものが挙げられる.
    • 筆記用具
      文字を習得した人には筆談は有効なコミュニケーション手段となる.
    • 文字盤
      50音表を記入したボードのことで,ユーザーは文字を指差すことでコミュニケーションをとる方法が一般的.もしユーザーが直接指差しできない場合は,支援者が指差しながら聞いてみて,目標が来たらサインを送る方法もある(後のハイテクコミュニケーション技法の「オートスキャン」に似ている).支援者は指差しをした文字を声に出すことで確認となる.また,文字盤で作成した文章はメモを取った方が良い.
    • 透明文字盤
      透明もしくは向こうがよく見える半透明のアクリル板に50音を記入したボードのことで,ユーザーが文字盤の文字を指差すことが困難な場合に,意図した文字に視線を向け,それを支援者が読み取りコミュニケーションをとる方法.使用方法は大きく分けると2つあり
      直接選択(EyeLink)…支援者が対面で文字盤を持ち,ユーザーの視線を手がかりに,お互いの目を目標の文字が一直線となる部分まで文字盤を動かし,ユーザーの視線の先の文字を読み取っていく方法.
      順次選択(Etran)…文字盤のグループを適当な数に分けておく.使用の際はユーザーの視線の動いた方向でグループを決定する.再度視線を動かしグループ内の1文字を決定する方法.
    • コミュニケーションボードコミュニケーションブック
      文字以外のシンボル,絵,写真,実物をコミュニケーション用にボードに配置したものがコミュニケーションボードであり,通常は指差しで利用する.よく用いられるシンボルとしてPCS(Picture Communication Syanbols)やPIC(Pictogram Ideogram Communications)がよく知られている.また,ボードを持ち運びできるように冊子にしたものが,コミュニケーションブックである.どちらも文字の理解できない方に有効だが,必要である.さらに,透明もしくは向こうがよく見える半透明のアクリル板にシンボルや絵を描き視線でコミュニケーションをとるボードのことを視線コミュニケーションボードという.
      ローテクコミュニケーション技法ならびにコミュニケーションシンボルについては下記サイトをご参照下さい.
  • ハイテクコミュニケーション技法
    音声を利用できるコミュニケーションエイドを使用したものが,ハイテクコミュニケーション技法であり,主に下記のものが挙げられる
    • VOCA(Voice Outout Communication Aids)
      音声を出力するコミュニケーション機器で,携帯可能な大きさのもの.なお,VOCAは「携帯用会話補助装置」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている(ただし知的障害者は日常生活用具給付の対象外となっている).
      • 1つのキーが本体についたVOCA
        基本的に1つのメッセージを録音・再生が可能である.機器によっては時系列上に複数のメッセージが録音・再生できる機器もある.音声を使う楽しさや意味を知るために有効.
      • 複数のキーが本体についたVOCA
        2~32個程度キーを持つものが多く,基本的にそれぞれのキーに対しメッセージを録音 ・再生が可能である.文字やコミュニケーションシンボルなどで表記されたオーバーレイシートを入れることで各キーのメッセージ内容を表すことができ,即応性に優れ,生活場面を限定すると実用的に使用可能である.
      • 50音の文字盤がありメッセージを作成し再生するVOCA
        文字を理解している方ならば文書の作成も可能であり,一般的には合成音声で再生する.ただし,文書をつくるためにキーを多く入力しなくてはならないので,即応性は低いことがある.
      • 液晶タッチパネル式のVOCA
        画面上にオンスクリーンキーボードが表示されているタイプのもので,階層式にメッセージの作成が可能であるので,多くのメッセージの使用が可能である.合成音声と録音音声を併用できるものがあり,簡単な環境制御(*1)ができるものもある.ただし,実用的に使いこなすには高い理解力が必要となる.
    • パソコンをベースにしたコミュニケーションエイド機器
      パソコンにコミュニケーションエイド用のソフトをインストールして使用するものであり,専用機として販売されているものとソフトウェアのみ単体で販売されているものがある.VOCAに比べると高機能ではあるが,携帯し持ち歩くことは困難である.文書を作成に時間がかかる場合が多いため,即応性に対応するために他のAAC機器と併用する場合がある.ゆっくりと日記や手紙の作成に使われることが多い.また,簡単な環境制御が可能なものもあり.なお,これらの機器は「重度障害者用意志伝達装置」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている.
      ハイテクコミュニケーション機器については下記サイトをご参照下さい.
  • ハイテクコミュニケーションエイドの操作方法
    下記にいくつかの例を示すが,実際問題として各機器により微妙に操作方法が違ったり,2つの操作方法が合わさったものなどがあるため,ユーザー・支援者ともよく理解した上で機器を導入することが望ましい.
    • 直接選択法
      キーを直接手や足の指,マウススティック(*2)で直接押し入力をする方法.キーを押す能力が必要である.
    • オートスキャン法(自動走査法)
      画面上に表示されたオンスクリーンキーボード(*3)上を自動で移動するカーソルを入力すべき文字のところでスイッチを押しキーを選択する方法.重度の四肢マヒのある方が対象となるが,スイッチの入力にタイミングが必要であるため,不随意運動や緊張のある場合はステップスキャン法を用いた方が良い場合が多い.
    • ステップスキャン法(逐次操作法・手動走査法)
      大きく分けてスイッチ2つで行なう方法とスイッチ1つで行なう方法の2種類がある.
      (1) スイッチ2つで入力する場合,一方のスイッチでオンスクリーンキーボードのカーソル移動,もう一方のスイッチでキーを選択し決定する方法,
      (2) スイッチ1つで入力を行なう場合,スイッチはオンスクリーンキーボードのカーソルの移動に使用し,目的のキーのところで一定時間止めておくことで決定を行なう方法,
      ホバリング自動選択と言われる.
      この方法だとスイッチを押す回数は増えるが,スイッチの押すタイミングは要求されないので不随意運動や緊張のある方でも入力が可能となる場合がある.
    • ジョイスティック・ポインティングデバイス・複数のスイッチによる入力法
    • オンスクリーンキーボード上のカーソルを上記の機器を用いて動かし選択,決定を行なう方法.スキャン法に比べると格段に操作性が向上する.

    • 符号化入力法
      モールス信号のようにスイッチを操作で長短組み合わせた操作を行ない操作する方法.四肢の運動は制限されているが,細かな操作が可能な人に適する場合が多い.




今回はここまで.次回から肢体不自由のある方へのAT/AACに入るが,かなり量があるので何回に分けるか考え中のため,次回冒頭で何回にするかご報告したい.その後,重複障害の方のAT/AACに進む予定である.

*1:環境制御装置(ECS):赤外線リモコンの信号を記憶させたり,有線の信号等を各種スイッチを用いて操作できるようにした機器のこと.
*2:マウススティック:主に頚椎損傷者がキーボードのキーを押すのに用いる口に加える自助具のこと.
*3:オンスクリーンキーボード:以前の記事「パソコンのアクセシビリティその6(ユーザー補助のアプリケーション」のスクリーンキーボードを参照のこと.


参考文献・サイト

  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会


言語障害のある方へのAT/AACその1 [e-AT・AAC(試験対策)]

それでは各論に入っての4セクションめ.言語障害のある方へのAT/AACの紹介である.ここまでAAC機器(コミュニケーションを支援する機器)は,あまり紹介してこなかったが,ここではAACの考え方そのものも記載しているので要注意,今回は言語障害の紹介とAACの考え方と技法の一部(非エイドコミュニケーション技法)をまとめていく.

  • 言語障害
    言語障害は日本では法的には「聴覚・言語障害」として分類されている.日本国内の18歳以上の在宅の聴覚・言語障害者数は約346,000人,18歳以下の聴覚・言語障害児数が約15,200人と推定される.
    • 言語障害の種類
      • Language(言語活動)の障害
        • Languageとは話したい内容を言語に置き換えたり,聞いた音が何かを判断し,言語音であればそれを意味に置き換える活動のことである.
        • 代表的な例として失語症が挙げられる.
        • 失語症は脳血管障害,頭部外傷により脳の言語活動を司る部分やそれを他の部分に連絡している部分に損傷を受けたときに発生する.
        • 失語症には大きく分けて
          (1) 理解はできるが言語に置き換えることのできない「運動性失語」と
          (2) 言語理解ができなくなる「感覚性失語」の
          の2つに分類することができる
      • Speech(話す活動)の障害
        • Speechとは言語を神経の信号として筋肉に伝え音声にする活動のことである.
        • 代表的な例として構音障害,発語失行,音声障害などがある
        • 構音障害の3つの種類
          器質性構音障害…口唇,口蓋裂や舌の切除など,発音する器官そのものに問題がある.
          運動神経性構音障害…脳や神経の損傷や筋肉そのもの(言語発声機能)に問題がある.
          機能性構音障害…上記のような問題はないが,「いす」を「いちゅ」というように発音の学習に問題がある.
      • Hearing(聞く活動)の障害
        • 音を受け取り,神経を通じて脳に伝える「聞く活動」の障害 → 聴覚障害.
    • AAC(Augumentative and Alternative Communications)
      • AACとは
        日本語に訳すと「拡大代替コミュニケーション」.会話や文章以外のコミュニケーション手段のことをいう.医学・心理学・言語学・音声学・工学などの研究者が重度障害のある人のコミュニケーション方法を学術的に研究する分野.日本では「コミュニケーションエイド」と呼ばれることもある.
        1970年代に障害者の自己決定が尊重されるようになり,コミュニケーションの要望が高まり,80年代に重度障害者とのコミュニケーション技法に関する研究であるAACが誕生した.AACは個人のもつすべての能力を活用してコミュニケーションを目指すものであり.技法としては「非エイドコミュニケーション技法(ノンテクコミュニケーション技法)」「ローテクコミュニケーション技法」「ハイテクコミュニケーション技法」の3つに大きく分けられる.
      • 非エイドコミュニケーション技法(ノンテクノロジーコミュニケーション技法)
        道具を用いないコミュニケーション技法のこと.具体的には以下のようなものがある.
        • 表出行動
          泣き声・笑い声・表情・体の緊張などがサインとして挙げられる.指差し・物を渡す・物を示す・ハンドリング(クレーン)などは要求を伝えるコミュニケーション行動である.
        • 読唇
          発音ができないケースでも構音運動が分かる場合,口の形から言葉を推測することができる.
        • 身振り・ジェスチャー・サイン
          身振り…「いただきます」「バイバイ」など日常で普通に使用される表現.
          ジェスチャー…頭を叩いて「ぼうし」,ハンドルを持った手で「車」など象徴的な身振りのこと.
          サイン…発信者と受信者のルールで成立するもので.一定の学習が双方に必要になる.代表的な例として「手話」「マカトン」などがある.
        • 残存音声
          発声が不明瞭でも身近は人には「発話の状況」として理解できるもので,「あー」「うー」とといった単純なものでも,意味がある場合がある.
        • 視線
          わずかな頭や眼球の動きから視線を使って要求を表出する.
        • Yes/No応答
          うなづきや瞬きなどで質問に応答する方法.ただし,質問内容の理解が困難な人には使用することが難しい.
        • 空書
          指先で文字を書いて意志を伝える方法のこと.

とりあえず今回はここまで.次回はローテクコミュニケーション技法,ハイテクコミュニケーション技法と各技法に使用する機器の紹介を行なう予定である.


参考文献・サイト
  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会

知的障害のある方へのAT/AACその2 [e-AT・AAC(試験対策)]

知的障害のある方へのAT/AACその2ということで.実際に認知や記憶を補助するための支援機器にはどのよなものがあるか紹介して行きたい.知的障害や認知障害の方が問題行動を起こしてしまう原因として「理解ができない」「見通しが立たない」などがあるが,その原因を補助する機器を紹介していく.

  • 聴覚認知を補助する機器
    • 集音器
      注意をすることに障害がある場合,聞こえてはいるが目的の声を聞き取ることが難しい場合があるが,集音器は特定の音をピックアップするのに有効.
      集音器に関しては下記サイトをご参照下さい.
    • シンボルや写真などを活用する(視覚メディアの活用)
      聴覚だけでなく,視覚のシンボルや写真など視覚を活用する.聴覚情報は時間的に流れる情報形態だが,視覚は時間的な制約が無く残る情報形態であるので,聞くだけでは理解できなくても,見ることで理解できる場合がある.また,自閉症の人は視覚で指示を受ける方が分かりやすい人が多いといわれている.なお,代表的なコミュニケーションシンボルとして,PCS(主に実物を単純化した絵を使用)やPIC(主にピクトグラムを活用したもの)などが市販されている.
      コミュニケーションシンボルに関しては下記サイトをご参照下さい.
  • 視覚認知を補助する方法
    • 静止画ではなく動画にする.
    • 文字にフリガナをつける.
    • 文字を読み上げる.
    • ワープロの漢字変換を使用者のレベルに合わせる.
    • キーボードの配列を分かりやすいもの(50音配列,ABC配列)にする.
  • 時間認知を補助する道具
    時間は理解できなくても量で表すことで補助することができる.
    (小学校時代放送部にいた筆者のおまけ:決まった時間内アナウンスを行なう必要があるとき,私の場合デジタル時計よりアナログ時計の方が,残り時間がどのくらいあるのか把握しやすかった.なぜかというと「残り時間が量(面積)で把握できるから」.実際のアナウンサーもアナログ時計の方が分かりやすい,という人が結構いるらしいです)
  • スケジュールの理解を補助する道具
    知的障害のある方や自閉症の方は見通しが立たないことで問題行動を起こすことがある.スケジュールを理解し,見通しを立つようにすることで,自分で理解し行動できるようになる場合がある.
    • スケジュールボード
      絵や写真を用いてスケジュールが分かるようにしたボードのこと.コミュニケーションシンボルやタイムエイドを併用する場合もある.音声言語で伝えられたことが理解できずスケジュールが理解できない場合や,スケジュールをノートなどに書くことができない人に有効である.
    • PDAやパソコンの活用
      スケジュールボードの内容をPDAやパソコンに入力しておくことで,映像や音声を組み合わせて分かりやすくすることが可能な場合がある.また,アラーム機能を使って通知してくれる機器もある.なお,携帯電話・PHSにもよく似た機能をもったものがある.
      スケジュールの管理に関しては下記サイトをご参照下さい.
  • 記憶を補助する道具(記憶エイド)
    • デジタルカメラ
      プリントアウトしたり,パソコンの画面上に写すことで活動内容を思い出すことができる.また,作業内容や手順を撮影しておくことで確認が可能になる.
    • ICレコーダ
      文字での記録が困難な場合,メモの代わりなどに大変有用である.
      メモや記憶を補助する機器に関しては下記サイトをご参照下さい.
    • 単語予測システム
      文章作成時に漢字や言葉を予測する機能がある.

次回は言語障害のある方へのAT/AACに入っていく.その続きのセッション,肢体不自由のある方へのAT/AACをまとめる予定である.


参考文献・サイト

  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会


知的障害のある方へのAT/AACその1 [e-AT・AAC(試験対策)]

障害別の各論に入っての3セクションめ.知的障害のある方へのAT/AACの紹介である.今回は発達障害,認知障害など本セクションで該当する障害の紹介を行なう.

  • 知的障害
    日本国内の知的障害児・者数は約455,500人(内訳18歳以上が338,900人,18歳未満が102,200人,不詳14,400人).法的には「療育手帳」を持つ人が知的障害と呼ばれるが,18歳以降に事故・病気等により認知障害・記憶障害を発しても,法的には知的障害とはならない.
    • 知能
      自分の回りの環境の利用に関する複雑さや,社会生活の複雑さを認識し,将来を見通して適切に対処するための能力の一側面であり,言語・計算・注意・空間認知・運動など様々な高次脳機能によって成り立っている.
      知能は知能検査で測定され,知能指数(IQ)で表される.IQの平均値は100であり,75以下のとき知的障害とする場合が多い.
    • 発達障害
      • 知的障害
        健常児または健常児の知能を基準とする言語性・動作性(非言語性)の知能検査により分類され(要はさっき書いたIQが75以下ということ),知的機能に広汎に障害のあるものをさす.なお知的障害の原因には遺伝・染色体異常・病気・事故などかある.
      • 自閉症
        3歳以前に発症する先天的な疾患であり,対人関係・コミュニケーションの障害,非常に強いこだわりなどの問題行動を表す.自閉症の7~8割には知的障害を伴うが,知的障害を伴わない「アスペルガー型」や一部に高い認知能力を示す「高機能自閉症」などさまざまな症状がある.見通しを立てることができるような生活環境を整えるTEACCH法などが問題行動の抑止に効果的といわれている.
      • 学習障害(LD)
        LDはLearning Disabilitiesの略であり,全般的に知能発達に遅れはないが,「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」能力のうち特定の能力に著しい困難を示す.
      • 注意欠陥・多動性障害(AD/HD)
        AD/HDはAttention Deficit/Hyperactivity Disorderの略であり,「じっとしていられない」「すぐに気が散る」「衝動を抑えられない」などの問題行動が生じる障害のこと.特に多動の場合は学習に遅れが伴うことが多い.
    • 高次脳機能障害
      高次脳機能とは「知覚」「記憶」「学習」「思考」「判断」などの認知過程と行為の感情を含めた心理機能のことであり,病気や事故により脳に損傷があった際に認知障害が生じた場合,高次脳機能障害と呼ばれる.
      • 記憶障害
        記憶には,注意する→覚える(記銘)→保持する→思い出す(想起)の4つのプロセスがある.注意には,はっきりと目覚める(覚醒),集中する,一定時間注意を持続させる,注意が逸れないようにする(転導性),一度に複数の対象に注意を分配しながら作業を進める機能がある.痴呆は一度身につけた「知能」が脳の構造的な損傷によって失われた状態であり,記憶障害は必ず発生する.アルツハイマー病が代表例.
      • 認知障害
        見えていて聞こえていてもそれが何か分からない障害のことで,形・色・顔・空間・音楽など脳の損傷部位によってさまざまな認知障害が発生する.
        (演劇好き筆者のおまけ:ちなみに今年公演のあった後藤ひろひと作・演出の「Shuffle-シャッフル-」で,伊原剛志演じる主人公の刑事「シャッフル」が事故で「相貌失認」になり,顔の記憶と人物の記憶が一致しなくなり別の人物に見えてしまう(つまりは「シャッフル」されてしまう)というのを作品のベースにしていたが,あれも実際にある認知障害のひとつの例)
      • 読み障害
        視覚的に文字の形を認知することに障害があり読めない障害と文字の意味は分かるが声に出すことができない障害がある.
      • 遂行機能の障害
        行動がなかなか開始できず,ひとつの行動が長続きできない場合と行動が中止することができず衝動的で欲求を抑えることができない場合がある.

次回は実際に認知や記憶を補助するための支援機器の紹介を行なう予定である.


参考文献・サイト
  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会

視覚障害のある方へのAT/AACその3 [e-AT・AAC(試験対策)]

今回は前回に引続き全盲の方への支援機器を紹介している.ではでは…

  • 読むことに関する支援技術(音声で読み上げる場合)
    • 録音図書
      本の読み上げをCDやテープに録音したものであり,デイジー(DAISY)という規格にあった録音図書の場合,パソコンや専用の機器で再生ができるもの.デイジーはDigital Accessible Information SYstemの略で目次から目的のページに飛ぶことや頭出しが可能などいろいろな機能を有する規格である.
    • 電子図書
      パソコンや専用機で読めるように電子化されたものであり,PDFやe-BOOK,Expanded bookなどの規格で配布される.これを音声化ソフトウェアを組合わせて読み上げることができる場合がある.
    • OCR
      Optical Charactor Readerの略で印刷物をスキャナでパソコンに取り込み文字認識させるもの.認識させた文章を音声化ソフトウェアで読み上げることができる場合がある.また,OCRと音声読書器を組合わせた専用機(音声読書器)もある.なお「視覚障害者用活字文書読上げ装置」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている.
      音声での読み上げに関する機器は下記サイトをご参照下さい.  
  • 読むことに関する支援技術(触読する場合)
    • 点字ディスプレイ
      テキストデータをパソコンに取り込み点字ディスプレイに出力する方法.
    • 点字図書
      点字図書館などにある点字化された本・新聞を利用する.なお「ないーぶネット」により全国の点字・録音図書の検索が可能.また「点字図書」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている.
    • 立体コピー
      コピーすると黒色の部分を発泡剤により立体的に浮き上がる機器で,イラストや図表の確認に使用する.
    • オプタコン(Optacon)
      OPTtical TACtile CONverterの略で小型カメラで撮影ものをピンの振動に変えて指先で読む装置.スタンフォード大学で開発され米TSI社から販売されていたが,現在日本では販売されていない.
      触読に冠する機器は下記サイトをご参照下さい.  

  • 書くことに関する支援技術(点字で文書を書く場合)
    • 点字器
      1点づつ点を手で打つ機器.携帯型と普通型がある.
    • 点字タイプライター
      大量に文章を打つには良いが,非常に重い.なお「点字タイプライター」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている.
    • 点字プリンタ・点字ディスプレイ
      パソコンで文書を作成し,点字プリンタ・点字ディスプレイに出力する方法.

  • メモを取るための支援技術
    • レコーダー
      市販のICレコーダーやカセットテープ・MDレコーダーを使用する方法.なお「視覚障害者用ポータブルレコーダー」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている.
    • 視覚障害者用電子手帳
      点字キーボード・ディスプレイを備えた携帯型の機器のこと.
      メモを取るための支援技術については下記サイトをご参照下さい.

  • 視覚障害者用ソフトウェア
    一般ソフトウェアより機能を少なく単純化し操作性を向上させたもの.全ての機能に音声ガイドがついている.

  • 移動ための支援技術
    • 白杖
      視覚に障害のある人が持って歩く杖.全盲の方だけが使っているわけではない.白杖は次のような使用方法がある.
      • タッチテクニック
        体の中心付近で体から3~40cm離したい位置で杖を持っていき,杖を高く上げすぎず左右にリズムよく振る方法で.歩行していく先の障害物を見つけるのに有効.
      • スライドテクニック
        振り幅やリズムを変えず杖先を地面につけて滑らせる方法.段差や階段を見つけるのに有効.
      • ショアラインテクニック
        壁や点字ブロックに杖を当を当てながら移動する方法.角やドアを見つめるのに有効.
      • タッチ&ドラッグ
        溝や歩行の縁石を歩くときに段差の下側を叩きながら歩く方法.落ちるのを回避するのに有効.
    • 盲導犬
      主人の命令に従い道の端を歩くこと,交差点の角で止まること,障害物を避けることを訓練された犬のこと.特定の場所まで誘導するものではないことに注意が必要.
      (競馬好き筆者のおまけ:ちなみに大型犬程度の大きさのミニチュアホースに同様の訓練をした「盲動馬」もわずかだが存在する.「馬の方が寿命が長いのでパートナーでいることのできる時間が長い」「馬はもともと臆病な動物であるので危険と感じたら必ず止まる」ことが利点らしい.ただ問題は小さくても馬なので飼うのに費用がかかりすぎることだそうな
      8月22日追加…先日梅田の某書店にて盲導馬に関する本を見つけたので紹介しておく.
      盲導馬をよろしく」佐々木 祥恵・望月 ひろみ著)
    • 障害物検出装置
      超音波を使って.音や振動で障害の存在を知らせる機器であり,めがね型,ボックス型,白杖埋め込み型のものがある.
    • 音声方位磁石
      方位を音声で知らせる機器であり,今後はナビゲーションシステムをして発展していくと考えられる機器.
    • 音声ガイドシステム
      位置などの情報を音声で知らせる機器.「ガイドシステムの送信機を持った人が来ると自動的に音声が流れるもの」「送信機に情報を入力しておいて携帯用受信機が送信機からの情報を聞けるもの」「地中の磁気センサーが白杖に付けた磁石を感知して音声で情報を知らせるもの」などがある.
      音声ガイドシステムには下記サイトをご参照下さい.


視覚障害のある方へのAT/AACその2 [e-AT・AAC(試験対策)]

前回は視覚障害の種類と弱視(Low Vision)の方向けの支援機器の紹介を行なったが,今回は主に全盲(Blind)の方向けのパソコン入力・出力装置の紹介を記事にしている.

  • キーボード入力に関して
    • 標準的なキーボードの使用した入力
      タッチタイプ(ブラインドタッチ)ができる場合,標準的なキーボードの使用は可能である.
    • 点字入力
      これには次の2つの方法がある.
      • 専用の点字キーボードを使用する方法
        点字の各点にあたる6個のキーがあり,該当する点を入力する.
      • 通常のキーボードをソフトウェアを用いて点字入力する方法
        ソフトウェアを用いて上記の点字キーボードの各キーを[F][D][S][J][K][L]に割り当て入力を行なう.
        点字入力ができないキーボードがあるので注意が必要.
        点字入力に関しては下記サイトを参照して下さい.

    • 携帯電話入力とポケベル入力
      テンキーを用いた入力方法.携帯電話入力は,[7]キーを1回押すと「あ」,2回押すと「い」,3回押すと「う」と入力する方法(テンキーと携帯の数字配列が違うので注意すること).ポケベル入力は「す」を入力したい場合,さ行(3行め)なので[3],う段(3段め)なので[3]と入力する方法.
    • 音声入力
      音声認識ソフトウェアを用いた入力方法であるが.誤入力するケースがあるため他の入力方法と併用するのが望ましい.
      音声入力については下記サイトをご参照下さい.
  • マウス入力に関して
    現在のところ全盲の方がマウス入力を行なうことはかなり困難である.代替としてキーボードナビゲーションやショートカットを使用するケースが多い.ただし,一部ソフトウェアは正しく機能しない(設計されていない)場合があるので注意が必要である.
  • 画面情報の確認
    MS-DOSのようなCUI(Character User Interface)の場合だとスクリーンリーダーや点字ディスプレイで情報を捕らえることができるが,現在はWindowsのようなGUI(Graphical User Interface)のOSが主流となっており,全盲の方の画面情報の把握は以前より難しいものとなっている.
  • スクリーンリーダー
    パソコンの画面上にある情報を読み上げるソフトのこと.ソフトウェアやウィンドウの内容を読み上げる機能と押したキーが何であるか文字を読み上げる機能を有する.欧米の特に英語などは単語の読み方は基本的にひとつであることと同音異義語が少ないため,読み上げ内容が把握しやすいが,日本の場合,同じ文字でも読み方が違ったり同音異義語が多いため,例えば「日本」を読み上げる際に「にちようびのにち,ほんばこのほん」いった具合に詳細読みが必要となる場合が多い.

    また,スクリーンリーダーが読み上げることのできないソフトウェアが存在する.画面上の全ての情報を読み上げることは不可能,パソコンがフリーズした場合ユーザーは情報を把握できないといった問題がある.なお,スクリーンリーダー自体が一般的なソフトウェアではないためトラブルやエラーを誘発させることもある.
    スクリーンリーダーについては下記サイトをご参照下さい.
  • 点字ディスプレイ(ピンディスプレイ)
    スクリーンリーダーの場合,時系列上に情報が伝わるため,全体の把握が困難な場合がある.スクリーンリーダーで読む部分を点字で表示すれば何度も確認をすることが可能となる.
    点字ディスプレイについては下記サイトをご参照下さい.
  • 点字プリンタ
    パソコンを用いて作成した文書を点訳(墨字から点字に変換すること)し点字プリンタで出力することが可能.また,作成した点字文書は点字エディタを用いて直接点字を編集することもできる.なお,図を出力するときは点図ソフトウェアを使用する(一部機器で可能)
    点字プリンタについては下記サイトをご参照下さい.

とりあえず今日はここまで.次は全盲の方の日常生活の支援機器の紹介を行なう.


参考文献・サイト
  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会

視覚障害のある方へのAT/AACその1 [e-AT・AAC(試験対策)]

今回から視覚障害関連の支援機器の紹介を行なう.本記事ではは視覚障害の種類と弱視の方への支援機器を紹介している.では早速…

  • 視覚障害
    日本国内の18歳以上の視覚障害者数は301,000人程度.18歳未満の視覚障害児数は4,800人程度と推測される.
    視覚障害者のある人の比率は年齢が高くなるほど高くなる.
    視覚障害には日常生活で視覚を全く活用できない全盲(Blind)と一部の視覚は活用できる弱視(Low Vision)に分けられるが,視覚障害のある方の約70%は視覚の活用が可能である.
    視覚障害の原因としては,
    • 眼球の機能障害 角膜や透光体の混濁(白内障など),角膜や水晶体の機能が働かない場合,瞳孔機能が働かない場合,網膜機能の問題など
    • 情報を伝達する神経や脳の障害によるもの
      • 腫瘍などによる神経の圧迫や神経の切断などによるもの
      • 脳腫瘍や脳血栓による脳の視覚野のダメージによるもの(皮質盲と呼ばれる)
      • 幼児期に視覚情報が与えられない状態(視覚遮断)が長く続くと,神経中枢の発達が妨げられるため視覚障害を生じる(乱視・斜視への対応は約8歳までに行なう必要がある)
    が挙げられる.
  • 弱視(Low Vision)の問題点
    弱視のある人には次のような問題点がある.
    • 像がぼけてはっきり見えにくい
      図と背景の境界線がはっきりしない.
    • 余分な光のために見えにくい
      まぶしすぎて見えない場合もあるが,光が少なすぎてもものが見えなくなるため適切な採光が重要.
    • 視野が狭い(視野狭窄)
      一度に見ることのできる範囲が少なくなり,全体を把握しづらくなる.
    • 視線を向けている先がよく見えない
      視野の中心が見えにくくなる状態(中心暗点)が生じる.あるものを見ようとするほど見えにくくなるのが特徴.
  • 視覚障害のある人とのコミュニケーション
    視覚に障害のある人とコミュニケーションをとる場合,こちらのジェスチャー,表情等は見えないことを踏まえ,以下のような点を注意しなくてはならない.
    • 誰が話しているか,誰に話しているかを分かるようにする.
    • 質問などには声に出して回答をするようにする.
    • だまって席を外さない.
    • ものの場所を移動した場合,必ず伝える.
    • 支援機器の設置の際は何の作業を行なっているか伝える.
    • 支援機器の設定内容,必要な支援などは必ずユーザーに確認を取った上で行なう.
  • 弱視の方のパソコンの使用について
    OSに付属するユーザー補助機能(画面拡大ハイコントラスト画面など)については以前の記事
    パソコンのアクセシビリティその5(視覚障害・聴覚障害者向けのユーザー補助について)
    パソコンのアクセシビリティその6(ユーザー補助のアプリケーション)
    パソコンのアクセシビリティその7(Macの場合)
    を参照のこと.その他の対応方法としては「画面のプロパティを参照し,フォントなどを大きくする」「ディスプレイの解像度を下げる」「大きい画面のディスプレイを用いる」などの方法がある.
    その他の専用ソフトウェアについては下記サイトをご参照下さい.
    なお,弱視の方がパソコンを使用する場合,画面に目を近づいて操作することが多いため,それによる障害が発生しないよう注意しなくてはならない.
  • 弱視の方の読み書きを支援する道具
    • 拡大コピー
      文字が小さいため弱視の方が読むことができない場合,コピー機の拡大機能を使うことで問題が解消する場合がある.
    • 拡大読書器
      ビデオカメラとディスプレイが一緒になった装置であり,ディスプレイにカメラで拡大したものが表示される機器.コントラストをはっきりさせるための白黒反転機能や画像強調機能のついたものもある.まぶしさを押さえ読んでいる行のみを表示する「マスク機能」や,同じ行を読めるようガイドラインを表示する「ライン機能」などが機能として備わっている.また,近年小さく持ち運びのできる「携帯用拡大読書器やディスプレイを頭にマウントするタイプの拡大読書器もある.また「拡大読書器」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている.
      その他の専用ソフトウェアについては下記サイトをご参照下さい.
    • ルーペ・単眼鏡

次回は全盲の方向けの支援機器についてまとめるのでよろしく.


参考文献・サイト
  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会

聴覚障害のある方へのAT/AACその2 [e-AT・AAC(試験対策)]

聴覚障害のある方へのAT/AACその1からの続き,今回は支援機器の紹介,ということで早速….

  • 電話の支援機器
    骨導式の電話機など専用のものは販売・レンタルが行なわれているが,簡易に音を増幅する補助機器もある.具体的には電話機と受話器の間に増幅器を取り付ける「外付型」のものと,受話器に直接増幅器を取り付ける「カプラー式」のものがある.専用の電話機は「福祉電話」の項目で日常生活用具の貸与対象品目となっている.

  • テレビ電話
    話し相手もテレビ電話を使用していることが条件にはなるが,視覚を用いることでより深いコミュニケーションが可能となる場合がある.
  • ファックス
    文字,イラスト等の視覚情報を伝達するのに有効である.ただし弱点として一方向にしか情報を伝達できない点が挙げられる.なお「ファックス」は日常生活用具の貸与対象品目となっている.
  • 携帯電話・PHS
    電話としての機能だけではなく,情報収集のツールとしても利用可能である.
  • 聴覚障害者用文字電話(TDD)
    キーボードと表示装置(LED)があり,文字のやり取りによってリアルタイムでのコミュニケーションが可能な電話機のこと.なお,TDDは“Telecommunication Devices for the Deaf”の略である.また「聴覚障害者用通信装置」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている.
  • 電話リレーサービス(TRS)
    聴覚障害者用文字電話を持たない人と使用している人の間にオペレーターが入り,内容の取次を行なうサービスのこと.なお,TRS=“Telephne Relay Service”の略である.
  • 電話関連の商品・サービスの詳細については下記サイトをご参照下さい.

  • メール・インスタントメッセンジャー・チャットなど
    インターネットの発展により上記のようなツールについても聴覚障害者への支援機器として使用されている.

  • 呼び出し装置
    聴覚障害者の場合,例えば人が来たときのチャイムの音や目覚まし時計の音(アテンションゲッタ…注意を引くための合図),赤ちゃんの鳴き声など生活していく上で必要となる音声のフィードバックが得られないため他の方法でフィードバックし合図にしなくてはならない.よく使用される方法としては大きく分けて2つあり,ひとつはフラッシュライトや回転灯などの視覚によるフィードバック,もうひとつがバイブレーターを用いた振動によりフィードバックである.
    なお,呼び出し装置については「聴覚障害者用屋内信号装置」の項目で日常生活用具の給付対象品目となっている.
  • 具体的な商品については下記サイトをご参照下さい.

  • 字幕放送
    日本で行なわれている字幕放送はクローズドキャプション方式と呼ばれ,外付の専用デコーダを用いるかデコーダを内蔵したテレビを使って見ることが可能である(ちなみにアメリカでは13インチ以上のテレビは必ず字幕放送用のデコーダを内蔵していなければならないと法律で定められている).ただし,現在(2005年)の段階で字幕放送がおこなわれているのは一部の番組のみである.
  • 文字放送
    専用のデコーダを使用することで,通常のテレビ放送の周波数帯のすきまを使用した独自の文字放送を見ることができる.字幕放送用デコーダ・文字放送用デコーダに関しては「聴覚障害者用情報受信装置」の項目で日常生活用具の給付対象となっている.
  • パソコンの利用
    聴覚障害があること自体はパソコンの使用にそれ程大きな支障とはならないが,音声フィードバックが無いことが問題となる.このことは「パソコンのアクセシビリティその5」をご参照頂きたい.
    むしろCAIとして聴覚障害児の言語指導(ことばを覚えるための教育)のためにパソコンのソフトウェアを利用するケースが多い.

「聴覚障害ののある方へのAT/AAC」はとりあえず以上でおしまい.次回は「視覚障害のある方へのAT/AAC」に入っていくのでよろしく.


参考文献・サイト
  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会

聴覚障害のある方へのAT/AACその1 [e-AT・AAC(試験対策)]

障害別の各論に入っていこうと思うのだが,人間全く同じ人はいない訳で,当然障害のある人も同じことが言える.Aさんに適した機器がBさんに適した機器であるとは限らない,ということをよ~く頭に入れておいて頂きたい.ここに書く「AT/AAC」の内容はあくまで私が参考文献を元に知っておいた方が良いと思った内容を記事にしている.今日は聴覚障害に関することをまとめてみたい(単純に自分の修論の題目が「聴覚障害児教育用ソフトウェアの研究開発」だったもので…).文章を書くに辺り,かなり参考文献を参照した.興味のある方は是非とも購入をお勧めする.

今回は主に聴覚障害の種類とコミュニケーション手段および補聴器の種類の紹介を行なっている.

  • 聴覚障害
    日本国内の18歳以上の聴覚・言語障害者数(在宅)は346,000人程度,18歳未満の聴覚・原語障害児数(在宅)は15,200人程度と推測される.
    難聴の定義はいくつかあるが,WHOは軽度(26~40dB),中等度(41~55dB),準重度(56~70dB),重度(71~90dB),最重度(91dB~)と定義している.また,身体障害者福祉法では両耳の聴力の程度が70dB以上を聴覚障害者と定義しており,程度により2級(100dB~),3級(90dB~),4級(80dB~),6級(70dB~)にレベル分けされる.
    難聴の種類は「伝音難聴」「感音難聴」「混合性難聴」の3種類がある.
  • 聴覚障害者のコミュニケーション方法
    聴覚障害者のコミュニケーション方法として次のようなものがある.
    • 筆談…筆談用のボードを使用.中途失聴者になった人で手話でコミュニケーションができない人には便利.先天的な難聴者の場合,手話を用いるケースがあり筆談が苦手な場合もある.
    • 表情・身ぶり・手ぶり
    • 読話…口の動きを読み取る.
    • 空書…空中に文字を書く
    • 手話・指文字…大きく分けて日本手話(主に聾者が使用)と日本語対応手話(主に中途失聴者が使用)の2種類がある.
  • 伝音難聴
    外耳・内耳が伝音系の問題により発生する難聴のこと.代表的な例として,鼓膜の破裂,中耳炎などがあげられる.医学的な治療により改善が可能なケースが多い.症状としては音が小さく聞こえるのが特徴である.
  • 感音難聴
    内耳以降の感覚系(神経など)の問題により発生する難聴のこと.代表低な例として,突発性難聴,老人性難聴があげられる.現在のところ医学的な治療による改善は困難とされる.症状としては,小さく聞こえることに加え,歪んで聞こえるのが特徴である.
  • 混合性難聴
    伝音難聴と感音難聴が混合した難聴のこと.
  • 老人性難聴
    老化により発生する難聴のことであり,20歳代から聴力低下がはじまる.症状としては高い音が聞こえにくくなるのが特徴である.
  • 補聴器
    補聴器は音を増幅する機器であり,伝音難聴に対してはほぼ問題を解決できるが,感音難聴については問題を解決することは難しい.
    形態によって「箱型(ポケット型)補聴器」「耳掛け型補聴器」「挿耳型補聴器」などがある.
    音を伝える方法として「気導式(イヤホン式)」と「骨導式(バイブレータ)式」があり,回路により「アナログ式」と「デジタル式」がある.
    使用にあたっては医師・言語聴覚士に相談した上で調整・フィッティング・訓練を行なう必要がある.
  • 気導式補聴器
    音声を増幅し鼓膜に伝える方式の補聴器のこと.
  • 骨導式補聴器
    音声の振動を直接骨に伝える方式の補聴器のこと.伝音難聴に有効である.
  • デジタル式補聴器
    近年普及しつつある補聴器であり,音声を使用者の聞き取りやすい周波数帯に変換した上増幅したり,特定の周波数帯のみ選択して増幅するといった処理が可能である.
  • 人工内耳
    体内装置と体外装置の2つからなる機器であり,手術により体内装置の電極部分を内耳に挿入する.体外装置にから体内装置に送られた信号により,直接神経を刺激するものである.使用に当たっては医師・言語聴覚士に相談する必要がある.
  • FM補聴器
    しゃべっている人の声を直接マイクでひろいFM電波で補聴器に送るものであり,騒音下で使用される.FM電波を用いるため隣室に漏れたり,混線することがある.
  • 赤外線式補聴器
    しゃべっている人の声を直接マイクでひろい赤外線で補聴器に送るものであり.騒音下で使用される.赤外線を用いるため志向性が強く混線しにくい.
  • ループ
    学校の教室やホールに敷設する磁気誘導コイルのことであり,補聴器の切替スイッチを誘導コイルモードにすると,磁気信号を受信し増幅を行なうもの.

次回は聴覚障害者への支援機器の紹介を行なうので,よろしく.


参考文献・サイト

  1. 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
    e-AT利用促進協会 監修
  2. 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
    e-AT利用促進協会 監修
  3. 福祉情報技術コーディネーター認定試験
    e-AT利用促進協会 監修
  4. アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
    ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳
  5. こころWeb
    こころリソースブック編集会


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