初モノ尽くしのグランプリ(2006F1第13戦ハンガリーGP) [F1]
8月6日,東欧で唯一開催されるハンガリーグランプリを回顧.今年で21回めとなるグランプリは「抜けない低速サーキット」として悪評高いブダペスト郊外の丘陵地に作られたハンガロリンクで開催されたが,この地では初めての,そして今年初めてのウェットレースとなった.ちなみにこのサーキット,抜きどころが無いのは良く言われているが,ドライバーやマシンの特性によっては一般的なオーバーテイクとは異なる方法での追い越しも見られる不思議なサーキット.これまでも後方からの逆転劇が何度か見られたのも事実なのだ.結果は皆さんご存知のとおりだと思うが,一応自分の中での決まりごとのようなものなのでまとめてみたい.
- ライコネン,2戦連続PP獲得
まずフリー走行.ここで2つの重要な出来事が発生する.ひとつめはポイントリーダー,アロンソ(ルノー)の危険走行.ドーンボス(レッドブル・フェラーリ3rd)にふさがれる形となったアロンソはホームストレートでの追い越しの際に手を挙げて怒りを見せる,だけならばよかったのだがその後がいけない.マシンを幅寄せし,1コーナー途中で急減速する危険行為を犯してしまう.結果,予選タイムに2秒加算のペナルティ.続いてランキング2位のM.シューマッハ(フェラーリ),こちらは赤旗中断中にアロンソ,クビカ(ザウバーBMW),クルサード(レッドブル・フェラーリ)を追い越してしまい,こちらも予選タイムに2秒加算のペナルティとなり非常に締まりが無く,ダーティな予選を迎えることになった.
予選第1セッション,第2セッション進出を目指すスーパーアグリの2台だが山本(スーパーアグリ・ホンダ)が22番手,佐藤(スーパーアグリ・ホンダ)がアルバース(ミッドランド・トヨタ)の上を行くに留まり20番手となる(最終的にはスピード(トロロッソ・コスワース)のペナルティに伴い19番手となった).マシンがSA06に進化し他チームのマシンを喰えるのは大きな進歩だがもう1ランク上を目指して欲しい.
第2セッション,ここでチャンピオンシップを争う2人がペナルティの影響をモロに受けノックアウト.アロンソが16番手,M.シューマッハが12番手.ヴィルヌーブの代役でここがデビュー戦となるクビカが見事に最終セッションに進出する.向えた最終セッション,コンストラクターズタイトル獲得を目論む2チームのセカンドドライバーの明暗がくっきり分かれた.フィジケラ(ルノー)は8番手,一方のマッサ(フェラーリ)はフロントロウを獲得,2番手となる.ホンダの2台はバリチェロが3番手,バトンが4番手と好調ぶりをアピール(ただしバトンはエンジン交換のため14番グリッドからのスタート).ポールポジションは多分ここも燃料搭載量を少なめにしているライコネンが2戦連続で獲得することとなった. - 雨中のスタート,大混乱
ウェットレースとなった決勝.非常に混乱が予想された.スタート時は路面に水が浮いている箇所がある状態.フォーメーションラップでデ・ラ・ロサ(マクラーレン・メルセデス)がスピン(コースには復帰)するあたり波乱を予感させる.シグナルが消えてスタート.ライコネンはスムーズに飛び出しホールショットを獲得.マッサはあっさりとバリチェロ,デ・ラ・ロサに交わされ水煙を被るハメに.中段ではM.シューマッハとアロンソが絶好のスタートを決め1周めコントロールラインをそれぞれ4番手,6番手で通過.ヴィルヌーブのいないこのレース,チャンピオン経験者はこの2人だけ,恐るべし!残念なのは山本,スタート直後の1コーナーでエンジンがストール.2戦連続でレースができなかった. - ミシュラン勢優勢
ウェットレースになるとブリヂストンと言っていたのは今は昔.序盤はミシュラン勢の攻勢が続く.アロンソもあっさりとM.シューマッハをパス.一気に2番手まで上昇する.多分もっと酷い状態,所謂エクストリームウェットを使用しなくてはならない状況になると状況は変わるのかもしれないが….ミシュランのウェットタイヤの進歩に少しびっくり.アロンソはライコネンのピット作業に伴い18周めにトップに立ちマージンを築き始める. - M.シューマッハ,フィジケラと接触
アロンソがトップに立つ少し前,タイヤに悩まされるM.シューマッハは激しくフィジケラに突付かれる形に.そして17周め,遂に1コーナーでフィジケラがM.シューマッハをパス.ラインをクロスさせ挽回を図るM.シューマッハだがそこでフィジケラと接触.フロントウイングを破損し後続車両にガンガン抜かれ,ピットインを余儀なくされる.なおフィジケラはその後あっさりスピンオフしてリタイア.仕事しようよ,フィジコ.ピット作業後M.シューマッハは屈辱的なことにアロンソにラップされてしまう. - ライコネン追突!セーフティカー登場
ピット作業終了後アロンソから離された2番手を走行していたライコネン,26周めに周回遅れのリウッツィ(トロロッソ・コスワース)に追突,宙を舞う.ウォータースクリーンが酷い状況では無く,単純に両者のボタンの掛け違いによるアクシデント,当然両者リタイア.コース上にはデブリが散乱しセーフティカーが導入される.これをきっかけに多くのマシンがピットイン.アロンソも1回めのピット作業を行なう.これによりどうにか同ラップに戻しギャップも詰まるM.シューマッハ,ラッキー. - 中盤戦,最速のマシンは何?
セーフティカーは32周めにピットに下がりレース再開.路面状況が回復傾向となる.この状況下他の車より2~3秒速いタイムで周回する車が2台.その2台は2番手走行のバトンとM.シューマッハ.M.シューマッハは順位を回復し,バトンはアロンソに急接近! - ついにアロンソにメカニカルトラブル発生!
バトンはアロンソを追い掛け回すが46周めのピットインで一旦休戦.アロンソも再度戦闘体勢を整えるべく51周めにピットに入る.作業は順調に行なわれたように見えたが…マシンが挙動不審.右リアタイヤのナットが飛んでしまいまっすぐに走ることができない!苦しみながら1コーナーを通過するも,2コーナーでコントロール不能に陥りコースオフ.アロンソ今期初リタイア,当然今期初ノーポイント. - バトン,ぐんぐんマージンを作る
前に何も無くなったバトン,ここでプッシュし大きなマージンを作る.終盤,ドライタイヤに履き替えたマシンが好タイムを出すも,2番手以下ははるか後方,冷静にピットに入りドライタイヤに履き替える.余裕を持ってトップでコースに復帰. - M.シューマッハ,ギャンブル失敗
中盤戦にゆっくりとだが確実に順位を上げてきたM.シューマッハ.2位を走行.しかし履いているタイヤはインタミディエイト,すでに溝は無く画面でもはっきり分かる消しゴム状態のタイヤ.ドライタイヤに交換しているデ・ラ・ロサに激しく攻め立てられ,抵抗するも虚しく交わされてしまう.さらにその後方からハイドフェルドが忍び寄る.今度はほとんど抵抗できずに交わされる.しかもその際にハイドフェルドと接触.サスペンションのロッドを破損し万事休す.残り3周でストップ. - バトン初優勝!そして第3期ホンダも初優勝!
2番手のデ・ラ・ロサに充分すぎるマージンを持っていたバトン,磐石の態勢でファイナルラップに.そして遂に来た初優勝!バトン,おめでとう.そして何よりホンダが2000年に復帰してから長い,ホントに長~い時間が掛かったが第3期初優勝!こちらもおめでとう,つかライブタイミング見ながら涙出そうになりました,いやホント.2位にデ・ラ・ロサ,3位にハイドフェルド,なんか新鮮なポディウムだ.以下4位バリチェロでホンダダブル入賞,5位に荒れたレースは本当にしぶといクルサード,6位R.シューマッハ(トヨタ),7位にクビカがデビューレース入賞,と思ったのだが残念ながら車両重量の規定違反で失格となり,7位にマッサ,8位にクビカ失格のおかげでどうにかポイントを拾う形となったM.シューマッハ,以上が入賞.最終的にクビカを除き11台がチェッカーを受け,13台が完走扱いとなった.
久々に大荒れのグランプリとなり,日本人としては祝福すべきグランプリとなった.このように路面状況がコロコロと変わり,各車がどのようなラップを刻んでいて誰がコース上で速いのか分かりにくいレースの場合,ライブタイミングがあると非常に便利なことを痛感した.というか,地上波見ただけでこの記事は書けない.…といういことは裏を返すと結果を知った上で地上波を見た訳だ,私は(涙).この記事の中で「初」というコトバが多く出てきたので折角なのでいろいろ過去を振り返ってみよう.
まずドライバー関連,バトン.こちらは当然初優勝.ちなみに114戦めでの優勝はバリチェロの125戦め,トゥルーリの119戦めに続く3番めの遅さ.優勝まで時間が掛かったが大成したドライバーというとハッキネン(99戦め),マンセル(75戦め)あたりが挙げられるか.このまま優勝できずにフェイドアウトするのかなぁ…などと個人的に感じていたので,まぁ良かっただろう.ここから一皮剥けるのか,それともアレジのように何も変わらないのか,そこが今後のバトンに対する評価の分かれ目だろう.次,デ・ラ・ロサ,マクラーレンのスーパーサブ化していたが今回の2位が過去最高位で初表彰台.苦労人で日本にも縁のあるドライバーなのでうれしい限り.そういや地上波で解説していた森脇さん,感無量だろうなぁ,ホンダの中本さんとは同期の桜だし,デ・ラ・ロサが全日本F3000でチャンピオンになったのも森脇さんのチームだったし.
では次,ホンダ関連ネタを.まず日本製エンジンの優勝は1999年第13戦イタリアGPのジョーダン・無限(H.H.フレンツェン)以来7年ぶり.ホンダエンジンの優勝ということになると1992年第16戦オーストラリアGP(G.ベルガー:マクラーレン・ホンダ)以来14年ぶり,ちなみにこれは第2期ホンダの最後のグランプリである.オールホンダでの優勝ということになると,何と1967年第9戦イタリアGP(J.サーティース)以来となるから実に39年振りということになるのだ!このようにデータを見ると実に今回のホンダの優勝が感慨深い物であるか,お分かり頂けるだろうか.私的な意見で恐縮だが,昨夜は1991年にマツダが日本車として初めてルマン優勝(V.ヴァイドラー/J.ハーバート/B.ガショー)を果たしたとき以来の感激を覚えた.いやぁ,モータースポーツって本当にいいもんですね.
あとこのレースの尋常では無い荒れ方.このような荒れ方をしたレースというとリアルタイムで見た上での感想になってしまうが,1999年第14戦ヨーロッパGP(ニュルブルグリンク:ウェットからドライに変わったGP.PPからスタートのフレンツェン(ジョーダン・無限)が序盤レースを支配するもリタイア.その後トップに立つマシンが続々と姿を消し上位陣総崩れ,結局ハーバート(スチュワート・フォード)が優勝,2位にトゥルーリ(プロスト・プジョー),3位にバリチェロ(スチュワート・フォード)となったレース.完走10台)や1996年第6戦モナコGP(モンテカルロ:雨の中オープニングラップで大混乱.トップ走行のヒル(ウィリアムズ・ルノー),アレジ(ベネトン・ルノー)がトラブルでリタイア,O.パニス(リジェ・無限)が優勝.完走7台,チェッカーを受けたのが確か…4台だったっけ?)あたりに匹敵するかな.
まぁ昔話はこのくらいにして,チャンピオンシップの行方を.アロンソ,ノーポイント,M.シューマッハがなんとか拾った1ポイントで10ポイント差に.M.シューマッハに自力優勝の可能性は残った.とはいってもアロンソが連続リタイアしようもんなら1発で追いつくのだが.コンストラクターはフェラーリが3ポイント詰めて7ポイント差,これはもう差が無いのと同じだろう.
グランプリは一旦夏休みに入りしばらくテスト禁止.次のレースは3週間後のイスタンブールでのトルコGP.最近できたサーキットの中では特性の違うサーキットであり,勢力図が一気に変わる可能性がある.まぁ,こちらもホンダ優勝で熱くなったのを一旦クールダウンする気持ちでゆっくりと待とう.では3週間後をお楽しみに!
今回は凄いレースでしたね。表彰台に上がった顔ぶれがやたらフレッシュでした(笑)でも、コンストラクターズを賞しての「君が代」は日本人として素直に喜べるひと時でした。私もバトンは、永遠に勝てないドライバーの一人だと思っていたので、このレースをきっかけにどのようなドライバーになるのか楽しみです。
私の愛するフェラーリは、天気と運とタイヤに見放され・・・辛いレースでしたが、久々のサバイバル・ハンガロ、堪能しました!!次回はトルコ。初開催なので、こちらもどうなるのか、楽しみです。
by as (2006-08-08 14:45)
asさま,コメントとniceありがとうございます.
やっぱり日本のコンストラクターが優勝するのはうれしいですね.
今回もルマンのときも表彰台を見たときは感慨無量でしたから.
あとは日本人で勝てるドライバーですねぇ.
佐藤が表彰台を獲得したアメリカGPは間違いなく勝てていたレースで
BARの作戦ミスでフェラーリを逃がしてしまったレースでしたから,
ってティフォシのasさんの前でいったら怒られそうですが:).
チャンピオンシップも一休み,ドライバーもコンストラクターも
一発で追いつき逆転が可能なところまできましたからねぇ.
私もトルコが楽しみです.
by yas-shi (2006-08-08 21:29)
こんばんは。
TBありがとうございました。
ハンガリーGPでバトンが優勝して君が代が聞けて、
琢磨も完走と良かったのですが、左近はまたダメでしたね。
次は完走とまで行かなくてもいいので、2周はしてもらいたいです。
by japanjapanjan (2006-08-08 23:03)
japanjapanjanさま,コメントありがとうございます.
山本に関しては不運なところが2戦続いちゃってますね.
きっちりと完走できるタイプのドライバーだと思うんですが….
まぁ,2周はともかくとして:),
きちんとしたピット作業を経験して欲しいですね.
そして日本GPの前に1度完走をして凱旋と,
そんな感じで山本には気負いすぎずにやって欲しいですね.
by yas-shi (2006-08-09 22:06)