重度重複障害の方へのAT/AAC [e-AT・AAC(試験対策)]
各論の6セクションめ.重度重複障害の方へのAT/AACについて.近年,肢体不自由養護学校に通う児童・生徒の障害の重度化が進んでいるが,そのような方が本セクションの対象者となっている場合が多い.医療の発達により今後も重度重複障害の方は増えるものと思われる.
- 重度重複障害
- 18歳以上の在宅の重度重複障害数は約175,000人と推測される.
- 知的障害と肢体不自由が合併するだけではなく,視覚障害,聴覚障害を合併するケースもある.
- 呼吸器など生命維持装置を装着している場合がある.
- 自分の発語や手足の動きがどのようなことを起こすか「因果関係(Cause and Effect)」を理解できていない場合が多い.
- 「因果関係」が理解できないことが多いため,発信行動がほとんど無い場合が多い.
- シンプルテクノロジー
- 因果関係を理解するために有効な方法として「シンプルテクノロジー(シンプルテクノロジーシステム)」がある.
- わずかな動きに反応するスイッチを使用し,電動のおもちゃや家電製品を動かし因果関係の理解を助けることが可能な場合がある.このシステムのことを「シンプルテクノロジー(シンプルテクノロジーシステム)」という.
- シンプルテクノロジーは通常,外部スイッチ,アダプタと電動おもちゃ・家電製品の組み合わせで構成される.
- 障害の症状・程度によりラッチ機能やタイマー機能を用いることがある.
- スイッチの選択
- 使用者の残存機能にあったスイッチを選択することが重要である.
- 使用者がスイッチに気付いていない場合があるので,支援者と一緒にスイッチを押し動作させてみることが必要な場合が多い..
スイッチに関しては下記サイトをご参照下さい.
- アダプタ
- 市販されている家電製品や電動おもちゃにスイッチを接続するためのアダプタが必要な場合がほとんどである(一部スイッチに接続できるよう改造済みのおもちゃも販売されている).
- 電動おもちゃにスイッチを接続するために必要なのが「乾電池アダプタ」である.
- 乾電池アダプタは電動おもちゃの電池ボックスの電極と端子の間に挟みこむ.乾電池アダプタのジャック部分にスイッチを接続し,電動おもちゃのスイッチをオンにしておく.
- 家電製品をスイッチで操作するためには「コンセントアダプタ」を使用する.
- ラッチ機能とタイマー機能
- 1度スイッチを押すと電動おもちゃ・家電製品が動作し,もう1度スイッチを押すと停止するのが「ラッチ機能」である.
- 1度スイッチをおすと一定時間電動おもちゃ・家電製品が動作するのが「タイマー機能」である.
- ラッチ機能やタイマー機能をもった装置はスイッチとアダプタの間に接続する.
- 継続したスイッチ入力が困難な場合,ラッチ機能もしくはタイマー機能が有効である場合が多い.
- 一瞬しかスイッチの入力ができない場合.ラッチ機能もしくはタイマー機能が有効である場合が多い.
- スイッチが入力したままになる場合,タイマー機能が有効である場合が多い.
- シンプルテクノロジーを用いた活動(アクティビティ)の内容によっても,ラッチ機能やタイマー機能を用いた方がより多くの活動が行なえる場合がある.
シンプルテクノロジーに関しては下記サイトをご参照下さい.
- 因果関係が理解できていない状態の使用者に,いきなりおもちゃとスイッチを渡してもすぐに遊べる訳ではない.
- スイッチの選択については使用者も気付いていない場合が多いので,支援者がスイッチ入力の補助を行なう必要がある場合もある.
- 使用者がどのようなものに興味があるのか,視線や指差しなどで判断して使用する機器を判断する必要がある.
- 使用者によっては運動できる状態になるまでに時間を要する場合があるので,支援者には「待つ」姿勢を持つことが必要である.
- 「障害があるからできない」ではなく「障害があってもできる」という認識を持つことが重要である.
- シンプルテクノロジーにより重度重複障害者が何かの役割を持ったり,活動に参加することができるようになる場合がある.このような何らか活動の一部分に参加すること(部分参加)を見つけることが重要である.
次回は盲ろうの方へのAT/AACについてまとめる.
参考文献・サイト
- 福祉情報技術 II 生活を支援する技術編
e-AT利用促進協会 監修 - 福祉情報技術 I 障害とテクノロジー編
e-AT利用促進協会 監修 - 福祉情報技術コーディネーター認定試験
e-AT利用促進協会 監修 - アダプティブテクノロジー ~コンピュータによる障害者支援技術~
ジョゼフ・ラザーロ 著/安村通晃 監訳/島原信一・中村美代子・石田直子 訳 - こころWeb
こころリソースブック編集会
コメント 0